アメリカ 新型コロナ。 新型コロナ「アメリカ起源説」「中国生物兵器説」は両方デマ。発信源は2つの有名陰謀論サイトだった

「アメリカのインフルは新型コロナだった説」は本当か?(忽那賢志)

アメリカ 新型コロナ

When did patient zero begin in US? How many people are infected? What are the names of the hospitals? It might be US army who brought the epidemic to Wuhan. Be transparent! Make public your data! US owe us an explanation! — Lijian Zhao 赵立坚 zlj517 趙立堅氏は、3月11日に米疾病対策センター(CDC)のロバート・レッドフィールド所長が米下院聴聞会で「インフルエンザ感染者の中に、新型コロナウイルス感染者が混じっていた例があったと思われる」と発言したことをとり上げ、次のようにツイートした。 「アメリカで最初の患者が出たのはいつだ?感染者数は?病院名は?武漢に伝染病を持ち込んだのは米軍かもしれない。 透明性を! データを公開せよ! アメリカは中国に説明する義務がある!」 趙立堅氏はレッドフィールド所長の揚げ足をとって、アメリカでの発生のほうが先だろうと示唆した。 何ら具体的な根拠がない、荒唐無稽な論理だが、中国政府高官がそうしたことに公式に言及するのは異例のことだ。 ウェブメディア「グローバル・リサーチ」に掲載された、「自称」上海復旦大学客員教授、ローレンス・デルビン・ロマノフ氏(通称ラリー)の記事。 Screenshot of Global Research ところで、実は趙立堅氏は前述したツイートの翌日、新型コロナウイルスの起源を知るうえで参考になるとして、2本のウェブ記事を紹介するツイートを投稿している。 「」(3月4日) 「」(3月11日) 趙立堅氏のアメリカ起源説のネタ元は、どうやらこれらの記事だったようだ。 書いたのはいずれも同じ人物。 両記事について、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が興味深いことを書いている。 「」(3月26日) WSJによると、趙立堅氏が引用した2本の記事の執筆者であるローレンス・デルビン・ロマノフ氏は70代後半のカナダ人で、ほぼ常に反米・親中国の論調で記事を発表しているという。 例えば、「1989年の天安門事件については、人民解放軍による発砲は学生たちの民主派デモとは無関係であり、『暴漢』や『無政府主義者』が兵士を攻撃したため自衛したにすぎない」といった具合だ。 同記事によると、ロマノフ氏は過去に怪しげなビジネスを行って有罪判決を受けている。 上海の復旦大学の客員教授と自称しているが、WSJが徹底的に調査してもその事実は確認されなかった、という。 いずれにしても、こうした怪しい人物が、怪しげな陰謀論をネット媒体に書くことは、そう珍しいことではない。 ただし、中国政府高官が一種のトンデモ記事を根拠として陰謀論を公式に主張するのは、ロシアの情報機関などが用いてきた「裏のフェイク情報工作」とは異なる、「なりふり構わぬフェイク情報工作」である点で、国際政治史的にエポックメイキングな出来事と言える。 「オタワ大学名誉教授」らが陰謀論の発信源 オタワ大学名誉教授で「センター・フォー・リサーチ・オン・グローバリゼーション(CRG)」所長のミシェル・チョスドフスキー氏の講演。 Paul S. Graham さて、前節で紹介したWSJ記事では、ロマノフ氏という怪しい人物の正体がメインになっているが、フェイク情報工作のウォッチャーとして筆者が注目するのは、それよりそのトンデモ記事を掲載したメディアのほうだ。 WSJ記事では単に「カナダ・モントリオールに拠点を置く、他のメディアとは異なる視点の記事を掲載するウェブサイト」「独立系の研究・報道組織を自称するウェブサイト」としか触れていないが、実はこのメディア、フェイク情報工作ウォッチャーの間では有名な陰謀論サイトだ。 サイト名は「グローバル・リサーチ」、運営しているのは「センター・フォー・リサーチ・オン・グローバリゼーション(CRG)」。 公的なシンクタンクを彷彿とさせるネーミングだが、所長の ミシェル・チョスドフスキー氏が2001年に創設したきわめて小規模な仲間うちの組織。 チョスドフスキー氏は、陰謀論の世界ではかなりの有名人だ。 カナダ人の経済学者でオタワ大学名誉教授。 こうした肩書きから、陰謀論を語る他の反米・反グローバリゼーション活動家よりは「格上」と見なされている。 その主張はかなり独特なので、いくつか例示しておこう。 11テロは米中央情報局(CIA)の自作自演。 中東を支配するためのアメリカの陰謀で、オサマ・ビン・ラディンはCIAの工作員• アルカイダもIS(イスラム国)もアメリカが作った。 アメリカはIS掃討を口実に中東への派兵を行い、支配を目論んでいる• シリアでの化学兵器使用は、アサド政権ではなく、反体制派による自作自演 このグローバル・リサーチの一派は、陰謀論系の反ワクチン運動(=ワクチンの接種を拒否する運動)を推進しており、ホロコースト否定論も打ち出している。 また、チョスドフスキー氏は、ロシア政府系メディアの「RT」「スプートニク」にしばしば登場する。 西側諸国の分断を煽るような言説の出どころはロシアの情報工作、というケースが昨今増えているが、チョスドフスキー氏らグローバル・リサーチの一派はその拡散に少なからず関与している。 その主張は徹底して反米・反北大西洋条約機構(NATO)であり、同機構の戦略的コミュニケーションセンター(ストラトコム)は、グローバル・リサーチをロシアのプロパガンダの主要な拡散装置の一つと見なしているとのもある。 今回は、そうしたいわくつきのウェブメディアに中国政府が「乗っかった」形だ。 趙立堅氏のツイートに「もしかしたら中国は何か情報を握っているのでは」と考える向きもあるようだが、情報の根拠は基本的にこの程度のものにすぎない。 2つの著名「陰謀論系サイト」 金融ブロガーのダニエル・イヴァンジイスキー氏が創設した「ゼロヘッジ(Zerohedge)」のサイト画面。 Screenshot of ZeroHedge 新型コロナウイルス関連のデマ情報についてはほかにも、フェイク情報工作ウォッチャーの間でよく知られるいくつかの陰謀論系サイトが暗躍している。 ただしその主張は、グローバル・リサーチが主張するアメリカ起源説とは真逆の、「中国生物兵器説」だ。 その筆頭が、オルタナ右翼言説で知られる金融ブロガー、ダニエル・イヴァンジイスキー氏が創設した「」と、極右系ラジオ・パーソナリティのアレックス・ジョーンズ氏が運営する「」だ。 ゼロヘッジは基本的には金融情報サイトだが、親ロシア・反米陰謀論の政治記事が際立っている。 インフォウォーズの ジョーンズ氏は前述のチョスドフスキー氏に匹敵する陰謀論界の「スター」だ。 米疾病対策センター(CDC)による新型コロナウイルスの電子顕微鏡画像。 同論文によると、新型コロナウイルスにはSARS(重症急性呼吸器症候群)を引き起こしたコロナウイルスにない、4つの新しい遺伝子配列が挿入されていて、その配列はエイズ(後天性免疫不全症候群)を引き起こすHIV(ヒト免疫不全ウイルス)と共通するという。 そして、その配列は自然に起こる現象とは考えにくく、それゆえ新型コロナウイルスは人工である可能性が高いというのだ。 しかし、この人工ウイルス説は、世界中の専門家によってすでに否定されている。 挿入されたという遺伝子配列はきわめて短く、実際にはHIVに限らず多くのウイルスにみられることや、最も似通った他のコロナウイルスと比べても1000以上の断片的な変異があり、そのような遺伝子操作は人工的には不可能で、むしろ自然な変異を示していることなどが指摘された。 遺伝子改変に使われる酵素などの痕跡も見当たらなかった。 結局のところ、ロシアのフェイク情報工作では常連といえる2つの陰謀論サイトが「新型コロナウイルスは中国の研究所でSARSとエイズのウイルスを合成したもの、つまり中国の生物兵器だ」というストーリーを生み出し、それが世界に数多ある陰謀論サイトを経由して拡散されたわけだ。 今後もこうしたサイトからフェイク情報が拡散されることになるだろうが、真に受けないようにご注意いただきたい。 ちなみに、インフォウォーズのジョーンズ氏は、トンデモ説の拡散と同時並行で「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に効く」と称して、歯磨き粉やクリームを販売する商売にも乗り出していた。 これに対しては、3月13日にニューヨーク州司法長官が販売中止を命令。 3月27日には、グーグルがGoogle Playストアでのインフォウォーズのアプリ販売を凍結している。

次の

新型コロナの収束で始まる、「米中全面対決」の危険性

アメリカ 新型コロナ

世界各地で猛威をふるい、我々のライフスタイルを根底から覆している新型コロナウイルス(COVID-19)。 最も感染者や死者の多いアメリカで、特にその打撃を受けているのが貧困層や人種マイノリティーなどの社会的弱者である。 今回は、コロナによって悪化するアメリカの格差問題を、米メディアで現地の生の姿を取材してきた日本人ジャーナリストが解説する。 高級住宅地には、プールやテニスコートを備えた大豪邸が立ち並び、マセラティやポルシェといった高級車が当たり前のように行き交う。 しかし、そこをちょっと離れるだけで、全財産をリュックや自転車に積んだホームレスたちが街をさまよう光景が広がる。 画期的指導法やテクノロジーをふんだんに取り入れて世界最高峰の義務教育を行う学校がある一方、貧困家庭やギャング抗争で授業どころではない学校が存在する。 最先端医療を求めて世界中から患者が集まる一方、10%以上の大人が健康保険に未加入で、たとえ加入していても高額な治療費で破産に追い込まれる人が後を絶たない。 所得による住み分けも明確である。 筆者は南カリフォルニアで最も貧しい砂漠地域から最も豊かな沿岸部に引っ越した経験がある。 以前、住んでいたビクターバレーという地域は、住民の半分以上が生活保護を受けていて、メイン通りは食事配給を待つ人々のたまり場と化していた。 住宅街には雑草が茂った空き家が目立ち、道路整備のお金がないため、ところどころが砂利道だった。 それに対して、今住んでいるアーバイン市は、優れた公立学校で知られているため、世界中から裕福な家族が集まり、1~2億円する新築の家が飛ぶように売れる。 住宅街は道路から景観まで常に完璧に整備されている。 二つの地域のデータを比べると、所得、教育水準、人種構成、職種、健康、医療などあらゆる面で対照的だ。 市民としても記者としても、アメリカ社会の格差を肌で体感してきた。 新型コロナはそんな格差をより浮き彫りにすると同時に悪化させている。 誰でも感染する可能性はあるが、その広がり方は極めて不平等なのだ。

次の

NYはなぜ世界最多の新型コロナ感染都市になったのか?(現地での報道&在住者目線)(安部かすみ)

アメリカ 新型コロナ

世界各地で猛威をふるい、我々のライフスタイルを根底から覆している新型コロナウイルス(COVID-19)。 最も感染者や死者の多いアメリカで、特にその打撃を受けているのが貧困層や人種マイノリティーなどの社会的弱者である。 今回は、コロナによって悪化するアメリカの格差問題を、米メディアで現地の生の姿を取材してきた日本人ジャーナリストが解説する。 高級住宅地には、プールやテニスコートを備えた大豪邸が立ち並び、マセラティやポルシェといった高級車が当たり前のように行き交う。 しかし、そこをちょっと離れるだけで、全財産をリュックや自転車に積んだホームレスたちが街をさまよう光景が広がる。 画期的指導法やテクノロジーをふんだんに取り入れて世界最高峰の義務教育を行う学校がある一方、貧困家庭やギャング抗争で授業どころではない学校が存在する。 最先端医療を求めて世界中から患者が集まる一方、10%以上の大人が健康保険に未加入で、たとえ加入していても高額な治療費で破産に追い込まれる人が後を絶たない。 所得による住み分けも明確である。 筆者は南カリフォルニアで最も貧しい砂漠地域から最も豊かな沿岸部に引っ越した経験がある。 以前、住んでいたビクターバレーという地域は、住民の半分以上が生活保護を受けていて、メイン通りは食事配給を待つ人々のたまり場と化していた。 住宅街には雑草が茂った空き家が目立ち、道路整備のお金がないため、ところどころが砂利道だった。 それに対して、今住んでいるアーバイン市は、優れた公立学校で知られているため、世界中から裕福な家族が集まり、1~2億円する新築の家が飛ぶように売れる。 住宅街は道路から景観まで常に完璧に整備されている。 二つの地域のデータを比べると、所得、教育水準、人種構成、職種、健康、医療などあらゆる面で対照的だ。 市民としても記者としても、アメリカ社会の格差を肌で体感してきた。 新型コロナはそんな格差をより浮き彫りにすると同時に悪化させている。 誰でも感染する可能性はあるが、その広がり方は極めて不平等なのだ。

次の